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第72号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年10月31日)

インダストリオール、フリーポートに関する投資家向けレポートを発行

2017-10-11

10月7日に行動を起こしたグラスベルグ労働者

 インダストリオール・グローバルユニオンは投資家向けレポートを発行し、グラスベルグ鉱山の人権侵害が財務面に影響を及ぼす可能性があると警告した。

 フリーポートは、グラスベルグ鉱山の管理をめぐってインドネシア政府と長期に及ぶ交渉を続けている。政府は鉱山の利権の51%を求めており、フリーポートに株式を売却させるために同社の輸出許可を停止した。

 これに対してフリーポートは労働者をレイオフし、これがストの引き金となった。労働者は5月1日からストを実施しており、これまでに4,200人が解雇された。

 労働者はつい最近、10月7日のディーセント・ワーク世界行動デーに行動を起こし、グラスベルグで進行中の不安定雇用問題を強調するとともに、解雇された労働者の復職を要求した。

 この投資家向けレポートは現状に注意を引きつけ、衝突が発生していること、解雇された労働者が収入を断たれ、4カ月にわたって融資や住宅、教育、医療を利用できない状況にあることを強調している。その結果、数人が亡くなったと見られている。

 このレポートは、現在の状況が投資家にもたらすリスクを強調し、株主に次のことを要求している。

  • フリーポート・マクモランと対話を始め、グラスベルグ鉱山の人権侵害疑惑に取り組ませる。
  • PTFIで労働者の権利が尊重され、同社の社会的営業免許が損なわれないようにするために、どのような措置を講じているかフリーポートに質問する。
  • 子会社のPTFIがスト権の行使を理由に解雇した労働者を復職させようとしない理由を同社に尋ねる。
  • 大量解雇とそれに伴う数千世帯の収入・基本的サービス喪失が人道的危機を発生させないようにするために、どのような措置を講じているか同社に尋ねる。

 伝えられるところによれば、インドネシア政府は株式の売却についてフリーポートと合意に近づいているという。どちらの当事者が鉱山の業務管理を担うか、この合意が労働者にどんな影響を及ぼすかは定かではない。

 ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。
 「フリーポートの投資家は、グラスベルグで一触即発の状況が発生している事実を認識し、同社に局面の打開を要求する必要がある」
 「フリーポートによる労働者の権利の重大な無視は、グラスベルグで人権危機を引き起こしている。インダストリオールは、解雇された労働者全員が復職するまで闘い続ける」

 

投資家向けレポート

フリーポートがインドネシアで重大な人権侵害

2017年10月

 インドネシア西パプア州のグラスベルグ金・銅山で、今年に入ってから、スト決行を理由に4,200人を超える労働者が解雇された。グラスベルグはアメリカの多国籍鉱山会社フリーポート・マクモラン(フリーポート)が株式の過半数を所有しており、同社のインドネシア子会社PTフリーポート・インドネシア(PTFI)が運営している。この鉱山ではごく最近衝突が発生し、ストに参加した鉱山労働者数百人が8月下旬に鉱山を封鎖、会社側を交渉に引き込もうとした。インダストリオール・グローバルユニオンは8月、インドネシアに連帯ミッションを派遣し、労働者がスト権の行使を理由に解雇されたあと絶望的な状況に置かれていることを確認した。労働者と家族は収入がなく、4カ月にわたって融資や住宅、教育、医療を利用できない状況にあり、その結果、数人が亡くなったと見られる。グラスベルグの労使紛争は人権問題だが、このレポートで示すように、事業、財務および保安面でも同社に潜在的なリスクをもたらす。このような理由で、フリーポートがこの問題にどう取り組むかは投資家にとって重大な関心事である。

 フリーポート・マクモランとインダストリオールとの最近のやりとりを見れば分かるように、インダストリオールは同社の言動に異議を唱えている。

  • インダストリオールは、労働者数千人の解雇はインドネシアの法律と労働協約(CLA)に従っているという同社の主張を退ける。
  • インダストリオール加盟組織CEMWU SPSIは、ストに至った労働争議を解決するために仲裁を求めた。
  • フリーポートは、この仲裁申立と同労組の交渉要請を拒否し、訴訟を起こすことにすると述べた。
  • インドネシア人権委員会(KOMNAS HAM)は、フリーポートの行動は重大な労働者の権利侵害に該当すると述べた。

 インダストリオールは同社に対し、解雇された労働者の復職をはじめ、CEMWU SPSIとの紛争の公正な解決に向けて交渉するよう要求している。今までのところ同社は、この妥当な要求を受け入れようとしておらず、交渉する義務はないと主張している。紛争の悪化が懸念されており、さらなる暴力行為発生の恐れがある。

 最近の動きの詳細と投資家への行動提案を以下に示す。

ストの背景

 このストはグラスベルグ鉱山の支配権をめぐるフリーポートとインドネシア政府の長期に及ぶ紛争の結果である。この鉱山は、全世界におけるフリーポートの金生産のほぼ98%、銅生産の25%を占めている。インドネシア政府は鉱山の利権の51%を求めており、フリーポートがこの要求を拒否すると同社の輸出許可を取り消した。これを受けてフリーポートは、生産ペースを落として労働者をレイオフし始め、これがストの引き金となった。具体的に言えば、PTFIはコスト削減のために労働者の約10%に一時帰休(長期休暇)を取らせた。CEMWU(化学・エネルギー・鉱山労組)は、労働協約違反である一時帰休方針の押しつけに反対するとともに、報酬や雇用保障といった基本的な労働問題をめぐる交渉を会社側が繰り返し拒否したことに抗議して、ストを開始した。フリーポートはストの合法性を認めようとせず、スト中の労働者を職務離脱とみなすと述べた。欠勤日が5日を超えた労働者は「希望退職」を受け入れたものとみなされる。PTFIは6月下旬の時点で、スト参加によって「自発的に辞職」したとみなした労働者4,220人を解雇していた。加えて、PTFIが25%を所有しているグレシックのPTスメルティングで1月、約300人の労働者がスト実施後に解雇された。

 8月にインドネシアに派遣されたインダストリオール連帯ミッションのメンバーは、PTFIがグラスベルグの労働者を解雇したあと、社宅から強制的に退去させ、会社の病院と学校の利用を拒否し、地元の銀行と共謀して労働者が融資を受けられないようにしていることを確認した。連帯ミッションは、何人かの労働者と家族が治療を受けられなかった結果亡くなったという話も聞いた。家を失った労働者の多くは現在、テントや組合事務所で暮らしている。この鉱山で働く多くの労働者が周辺地域に住んでおり、これが同社との緊張を高めている。8月に鉱山と労働者の間で勃発した緊張が継続または拡大すれば、これは同社に新たな保安上のリスクをもたらすかもしれない。

 スト実施を理由とする労働者の解雇は、インドネシアが批准済みのILO中核的労働条約に違反する。インダストリオールはフリーポートに書簡を送り、直ちにPTFIに介入し、不当解雇された労働者を復職させるよう要求した。インダストリオールはILOにも介入を求めた。パプア州知事はフリーポートにスト参加者の復職を公式に要求した。同州政府は調停会合の招集によって局面を打開しようとしている。フリーポートは、これらの要請された会合に2回欠席した。「フリーポートの行動は重大な労働者の権利侵害に該当する」と述べたインドネシア人権委員会(KOMNAS HAM)は、9月前半時点で、すでにフリーポートに実情調査団を派遣しており、数週間後に勧告を出す予定だった。

 8月下旬には、いくつかのニュースソースが、フリーポートが政府と新規契約を結んだと報告した。この契約により、同社は株式の一部の売却に同意し、政府はPTFI株の51%の株式を所有することになる。本稿執筆時点で、フリーポートの株式売却のスケジュールは明らかになっていないが、ある報道によると、この株式売却後もなお、同社はPTFIの「事業と統治に対する支配権を維持する」という。フリーポートは製錬所の建設など、政府が要求していたその他いくつかの譲歩にも同意した。それに応じて政府は、この鉱山で同社の契約を2021年から2041年まで延長することに同意している。

 注目すべきは、西パプアの地位をめぐる紛争があり、独立運動がインドネシアによる資源の略奪を非難していることである。フリーポートはインドネシア軍に金を払ってグラスベルグ鉱山を警備させており、過去に暴力事件が発生したこともある。

投資家にとっての重要性と行動提案

 フリーポートのインドネシア事業における展開は、同社に重大な影響を及ぼす可能性がある。フリーポートは最新の10K報告書で、これらの事業の労働不安に伴う潜在的リスクを取り上げている。グラスベルグの生産性は最近の労使紛争の影響を受けており、労働生産性の問題は「2017年2月に始まった労働力削減によって悪化する恐れがある」と同社は指摘している。フリーポートによる労働者の取り扱いは同社の人材管理アプローチにも疑問を投げかけており、今度は会社の業績に影響を与える可能性がある。フリーポートがPTFIおよびグラスベルグ鉱山に対する業務管理権を維持することを踏まえて、インダストリオールは、投資家各位がフリーポート・マクモランの責任ある株主として次の点を考慮するよう求めている。

  • フリーポート・マクモランと対話を始め、グラスベルグ鉱山の人権侵害疑惑に取り組ませる。
  • PTFIで労働者の権利が尊重され、同社の社会的営業免許が損なわれないようにするために、どのような措置を講じているかフリーポートに質問する。
  • 子会社のPTFIがスト権の行使を理由に解雇した労働者を復職させようとしない理由を同社に尋ねる。
  • 大量解雇とそれに伴う数千世帯の収入・基本的サービス喪失が人道的危機を発生させないようにするために、どのような措置を講じているか同社に尋ねる。
 

 

*下記リンクから英文全文をダウンロードできます。
http://www.industriall-union.org/sites/default/files/uploads/documents/2017/INDONESIA/investor_briefing_oct17_v4.pdf

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