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第158号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2023年7月5日)

OECD鉄鋼委員会で労働者への投資を要求

2023-03-14

【JCM記事要約】

  • 第93回OECD鉄鋼委員会が2日間に亘ってパリで開催され、会合では労働組合の他様々な専門家が参加した。専門家は世界の鉄鋼需要と鉄鋼生産に関する最新情報を提供し、2023年の需要と生産は不透明であると発表した。労働組合はウクライナにおける現在の労働市場改革について懸念を表明し、労働者への支援ならびに投資と鉄鋼部門の公正な移行の確保の必要性を訴えた。
  • OECD鉄鋼委員会は最終的に、エネルギー・原料危機を受けて、今後サプライチェーン観測所を立ち上げる可能性についても議論。インダストリオール・クリスティン書記次長は、公正な移行の責任は労働者だけで担うことはできず、多国籍企業が脱炭素化と労働者への投資によって果たさなければならない、と主張した。

 

2023年3月14日:TUACとインダストリオール・グローバルユニオン、インダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、議題がウクライナの鉄鋼業の状況であれ、全世界の鉄鋼部門の脱炭素化であれ、国際貿易の現状であれ、鉄鋼労働者への影響を討議の中心にしなければならないと主張した。鉄鋼労働者に変化に関する情報を与えて協議し、彼らの雇用を保護しなければならない。
                                                      

3月13-14日にパリで第93回OECD鉄鋼委員会が開かれ、政労使をはじめとするステークホルダーが、世界の鉄鋼部門が直面している課題をめぐって討議した。

労働組合が発言し、ウクライナにおける現在の労働市場改革について懸念を表明するとともに、企業と政府に対し、労働者への支援・投資と鉄鋼部門の公正な移行の確保を求めた。

会議の冒頭に、ロシアによる進行中の違法な戦争を踏まえて、ウクライナ情勢と世界の鉄鋼市場に対する影響に関する最新情報が提供された。世界の鉄鋼市場がエネルギー不足と原料入手難の影響を受け続けている中で、TUACは、ウクライナ政府が労働法改革と労働組合活動の抑制(団体交渉の弱体化など)を画策していることに照らして、すべての労働者に対する影響を指摘した。

ベロニカ・ニルソンTUAC暫定書記長が次のように述べた。

「ウクライナの労働者と労働組合は先頭に立って、ウクライナに対するロシアの違法な攻撃に立ち向かっている。私たちはウクライナ政府に対し、まだ働いている労働者ならびに今後復帰する労働者の労働条件と団体交渉権の維持を確保するよう要請する。拙速な労働市場改革によって条件や権利を弱めてはならない。団体交渉代表権と社会的対話はヨーロッパの基本的な価値観であり、ウクライナのEU加盟に向けて維持・強化しなければならない」

さまざまな専門家が世界の鉄鋼需要と鉄鋼生産に関する最新情報を提供し、2021年と2022年は世界レベルで全般に堅調だったが、2023年は依然不透明であるとの見通しを示した。世界最大の鉄鋼生産国である中国はOECD加盟国ではないが、労働組合は中国の鉄鋼業における展開に関する最新情報を歓迎し、世界的な過剰生産能力が今なお大きな問題であることに留意した。

世界的な過剰設備危機のリスクが高まっており、世界の生産能力と粗鋼生産量の差は2022年現在6億3200万トン(2021年5億1690万トン)に達している。世界的な過剰設備が原因で鉄鋼価格が下落し、競争条件が不平等になっているので、労働組合は、これに取り組むために国際レベルの共同行動強化を再び求めている。

クリスティン・オリビエ・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長が次のように述べた。

「この移行の責任は労働者だけで担うことはできないし、担わせてはならない。多国籍企業は、脱炭素化と労働者への投資によって完全に責任を果たさなければならない。それは社会的・環境的公正の問題だ」

前回のOECD鉄鋼委員会での公正な移行の確保に関するTUACのプレゼンテーションを受けて、鉄鋼部門の脱炭素化の主題が再び議題に載せられ、G7とG20の代表が最新情報を提供した。インダストリオール・ヨーロッパ労働組合はOECD諸国の政府・使用者に、グリーン移行は公正な移行でなければならないことを思い出させ、労働者や地域が置き去りにされないようにするという労働組合の具体的な要求を突きつけた。

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合のジュディス・カートン=ダーリング書記次長が述べた。

「国際鉄鋼部門の脱炭素化はグローバルな課題であり、私たちはOECDがこの主題にさらに重点を置いていることを歓迎する。鉄鋼労働者はグリーン移行の中心にあり、移行の全レベルで関与しなければならない。つまり、全レベルで質の高い社会的対話を行い、変化を適切に計画・予想することにより、労働者や地域が取り残されないようにするということだ。私たち抜きに私たちのことを決めないで!」

OECD鉄鋼委員会はさらに、現在のエネルギー・原料危機等を受けて、サプライチェーン観測所を立ち上げる可能性についても議論。この危機は不確実性、価格上昇、材料の供給ルート変更、そして時には鉄鋼生産の停止をもたらし続けている。OECD2023年末までに成果物を提出することを目指している。

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