中央討論集会パネルディスカッションにおける各産別の発言要旨
電機連合
自動車総連
JAM
基幹労連
全電線



電機連合
電機連合
大福書記長
■産業動向
電機産業全体では、エレクトロニクス分野が7割を占めている。エレクトロニクス分野は前年比6%程度の伸びとなるが、水準は低く、15年前の水準である。デジタル家電(薄型テレビ、DVD、デジカメなど)は好調だが、重電、白物家電など他の分野では、回復の足取りは重い。これに伴い、企業業績も2極分化している。しかし、牽引役のエレクトロニクス分野は、グローバル化が進んでいる分野でもあり、電機産業全体の先行きが不透明な状況となっている。
■2004年闘争の取り組み
2004年闘争は、2年タームの総合労働条件改善闘争の2回目の取り組みとなる。デフレの脱却と経済の本格的回復、組合員のモラールを維持・向上をめざしていく。
取り組みの中身は、今年もベア要求は行わず、賃金体系の維持に取り組むことが特徴といえる。ベア要求は、@実質賃金の維持・向上(物価、生計費)、A国民生活の成長性(GDP)、B賃金の社会性(産業内外の格差、賃金の相場性)、C企業業績の成果反映、を総合的に勘案して決定しており、その結果、ベアを求めず、賃金体系の維持によって底支えをしていくこととした。賃金は、職群別の基幹労働者で、35歳技能職(4人世帯)、もしくは30歳技術職(3人世帯)のいずれかを選択する。18歳最賃は過去2年間ベア要求を行わないなかでも引き上げており、現行150,000円となっていることから、引き上げ要求を行わない。次世代育成支援対策推進法への対応を柱に、男女平等参画の環境整備に取り組む。具体的には配偶者出産時の夫の休暇を5日とするよう求めていく。またキャリア開発支援等にも取り組む。
運動論としての特徴は、中小組合の闘争に焦点をあて、大手の力を中小のサポートにあてる。
自動車総連
自動車総連
萩原事務局長
■産業動向
2003年の生産台数は、雇用確保の分水嶺である1,000万台を確保した。メーカー各社の収益は、為替差損により減益ではあるが、6%台の営業利益率を確保している。しかし、各社ごとのばらつきは大きい。部品は、上場103社では経常利益が若干増加しているが、加盟組合全体では、2003年度増益予想は半数に満たず、昨年並みか若干厳しい状況にある。販売部門は過当競争により厳しい状況にある。メーカーの収益、利益率はここ数年急激に高まっているが、部品では伸びていない。収益格差が拡大傾向にあるため、賃金格差の是正も進んでいない。現地生産が拡大し、為替の収益への影響は少なくなってきたが、為替の影響を回避するため現地生産が加速することになれば、雇用に影響することが懸念される。
■2004年闘争の取り組み
2004年闘争では、個別ポイント絶対水準要求の銘柄を「技能職中堅労働者」とする。これは、生産現場において、習熟期間をほぼ終了し、一人前の技能を有し、近い将来、熟練作業者あるいは優秀な監督者となり得る資質・能力を備えた者、などの定義によって、35歳・勤続年数17年相当をイメージしている。
金属産業、自動車産業は、全産業平均に比べ付加価値生産性が高いが、所定内賃金は平均を下回っていることを念頭におかなければならない。マクロでは要求が困難であっても、格差是正という観点で、産業の位置づけにふさわしい賃金のための努力をすべきであるというスタンスは持つべきである。産業全体を支えてきた「人」にこそ付加価値の配分を行うべきである。ベースアップについては前向きに検討すべきである。また、賃金制度の整備・確立に取り組む。すべての組合がポイント賃金を把握する、賃金カーブ維持分を把握する取り組みを強化する。あわせて産業内の格差是正にも取り組む。
総労働時間は金属産業のなかにあっても高い実態にあることを踏まえて、労働時間短縮に向けて労使の議論を充実させていく。新たな取り組みとして、解決日程の早期化等にも取り組んでいく。

発言者の皆さん

司会の團野事務局長


JAM
JAM
大山書記長
■産業動向
設備投資関係は堅調に推移しているが、製品価格との関係で、名目ベースの伸び率は必ずしも堅調とはいえない。住宅関連は低水準が続いており、公共投資はご承知のとおりの状況である。土木建設機械は、中国への輸出によって好調となっている。JAM全体で見れば3極に分かれている。9月時点での単組のアンケートをみると、生産動向見通しは、まだまだ「減少」が多いが4月段階からは改善してきている。経常利益はまだ水面下にあるが、4月時点からは改善はされてきている。関係する業種によって状況が異なっている。製品価格の見通しは、4月からは改善はされてきているが、△69が△61に改善されたに過ぎず、圧倒的に低下している状況にある。
■2004年闘争の取り組み
2001年の9月以降、JAMの組合では、半数以上の組合が合理化問題等で困難な判断を迫られてきた。2001年9月以降、倒産、工場閉鎖等が230件、希望退職募集が400件となった。金融機関の動きによって労使の努力が水に流されてしまう事態も起こりかねない状況が今後も続くと考えられる。
こうした状況を十分に踏まえ、2004年闘争では、賃金構造維持分の確保に取り組む。2002年・2003年と賃金構造維持分が必ずしも確保されず、実質的に賃金水準が維持できていない組合、さらに根っこから賃金引上げがされていない組合が少なくない。連合の中小・地場に対する要求目安である5,200円をシンボルとして中小の取り組み強化をする。
一時金は、年間5カ月基準で取り組んできたが、最低到達目標を年間4カ月として取り組む。業績が良いところは一時金で上積みを求めていく。
JCの登録組合を中心として、JCの集中回答日に回答を引き出し、JAMの相場形成の取り組みをする。また、連合を中心に中小の相場形成をめざしていく。

基幹労連
基幹労連
内藤事務局長
■産業動向
基幹産業全体では、まだまだ本格的な回復には至っておらず、景気回復の波に乗り遅れている。
鉄鋼産業では、中国の急激な拡大によって、世界の鋼材需要は堅調であり、日本の粗鋼生産は1億トンを維持している。また、鋼材価格は、世界的に回復傾向にある。総合各社の業績は急激に回復しているが、財務体質は他産業に比べて悪い状況にある。
造船産業では、生産体制のグローバル化によって船の需要が増えていることから、受注量は高水準が続いている。しかし、船価は低迷しており、業績には大きな懸念がある。航空宇宙産業、エネルギー産業は需要そのものが低迷しており、造船重機械産業全体としては厳しい状況が続いている。
非鉄金属産業は、世界的な需要の逼迫によって原料鉱石の買い入れ価格が上昇し、収益を圧迫している。このため大きなバラツキがみられる。
■2004年闘争の取り組み
2004年闘争を求心力の創造と将来不安の解消を基本におく。働く者の活力の維持・向上のためには成果配分が不可欠である。産別としてのベア要求は見送るが、デフレ不況のなかで今は難しいという判断であり、ベア否定論、不要論になるわけがない。
一時金を中心に活力がでる配分を求め、年間5カ月を基本に要求していく。鉄鋼部門は、年間基準要求額120万円+成果還元分最大40万円、業績連動型決定方式の導入、船重部門は年間50万+3.5カ月(約163万円)(三菱重工のみは56万円+3.5カ月)、非鉄部門は130万円を最低保障ラインにした業績連動方式の導入をまず掲げ、年間160万円となっている。
60歳以降の雇用については、「現場力の復活」の原動力となる、技術・技能を持ち、経験があり、忠誠心・仕事への愛着があり、働く意欲がある人材の活用、社会保障制度に対応した取り組みと位置づける。
鉄鋼部門の中期賃金改善は、製造業平均への賃金水準の回復に向けて、2004年・2005年の次のステップに向けて、新たな財源投入によって製造業平均までどのようなステップで、どういう手法で高めていくのか、このことについて約束手形をもらおうという交渉である。そのことで、ベアに取り組むという姿勢を明らかにしようということである。

全電線
全電線
前田書記長
■産業動向
銅電線の出荷量は、90年度の120万トンから直近では80万トンに落ち込み、27年前の水準となっている。国内需要の減少に加えて輸入品が増加しており、競争激化による価格の低下が見られることから、事業統合が進んでいる。光ファーバーなど非電線分野は、今後が期待されているが、ITバブルの崩壊によって2001年度以降需要が大幅に減少し、2003年度の需要見通しは前年比12.1%のマイナスとなっている。価格も低下しており、厳しい状況におかれている。構造改革の効果が若干出てきており、昨年比では若干回復傾向となっている。大手の業績も02年度は概ね赤字決算であったが、03年は改善傾向がみられる。
■2004年闘争の取り組み
2004年闘争は、産業全体は改善方向に転じてきたが、多くの企業で事業改革途上であること、企業諸施策が継続している状況であることから、雇用を最優先に生活を守る観点で、雇用の確保、生活不安の払拭のための総合的な労働条件改善闘争につなげていくと位置づけた。
労働条件全体では、@賃金構造維持分の確保、A賃金制度改定を行う場合は、組合員の活性化の観点、納得性・透明性のある制度確立のため、賃金原資を確保した上で取り組む、B底辺を守る取り組み強化の観点から、企業内最賃協定、JCミニマム(35歳)に向けた実態把握、C一時金の産別ミニマム4カ月の確保、に取り組む。
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