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第70号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年8月31日)

インドネシアへのインダストリオール・ミッション、解雇された労働者の人権危機を確認

2017-08-11

8月9日に行われたエネルギー鉱物資源省の首脳との会談

 PTフリーポートとPTスメルティングでストを理由に解雇された労働者と連帯するインドネシアへのインダストリオール・グローバルユニオン・ミッションの結果、人権が危機にさらされており、労働者が食料や住宅、教育、基本医療を利用できない状況にあることが分かった。

 西パプア州で大規模なグラスベルグ金・銅山を経営している米国系フリーポート・マクモラン傘下のPTフリーポートで、4,200人を超える労働者がスト実施を理由に解雇され、グレシックのPTスメルティングでも1月、約300人の労働者がスト実施後に解雇された。

 ミッションは2017年8月8~11日に実施され、オーストラリア(AWUとCFMEU)、オランダ(FNV)、北米(USW)および南アフリカ(NUM)のインダストリオール加盟組合の指導部が参加した。

 このミッションは、インドネシアの組合CEMWUとSPSI、FPE SBSI、FSPMIならびに労働省とエネルギー鉱物資源省の首脳、それにPTフリーポート企業経営陣、この鉱山に出資しているリオ・ティントと会談した。PTスメルティング(株式の過半数を三菱が、25%をPTフリーポートが所有)は会見を拒否した。

 ミッションは、PTフリーポートが「任意退職した」と言う同社労働者の処遇について重大な証言を聞いた。

 「本ミッションに寄せられた情報によると、会社側は労働者を解雇したあと、社宅から強制的に退去させ、会社の病院と学校の利用を拒否し、地元の銀行と共謀して労働者が融資を受けられないようにしたという。私たちは、何人かの労働者と家族が治療を受けられなかった結果亡くなったというショッキングな報告を受けた。家を失った労働者の多くは現在、テントや組合事務所で暮らしている」とインダストリオール・ミッションは8月11日の声明で述べた。

 「PTフリーポートとPTスメルティングはいずれも、解雇した労働者を非人道的に、軽蔑的な態度で扱っている。PTスメルティングは州労働省の要請に反して労働者の給料・給付の支払いを拒否しており、組合は裁判所で解雇無効を申し立てている。PTスメルティングは、労働者の所属組合FSPMIと紛争の解決に向けて交渉することも再三にわたって拒否した。FSPMIの報告によれば、解雇された労働者たちは今、法廷審問でテロリストよりもひどい扱いを受けており、銃器と催涙ガスを携帯した警察が配備されている。これらの行動は、ILO条約に定める労働者の団結権、団体交渉権およびスト権を明らかに侵害している」と声明は続けた。

 ミッションは8月9日の労働省およびエネルギー鉱物資源省の首脳との会談で、PTフリーポートとPTスメルティングの紛争解決を促進するために両省が一層の努力をするよう要請した。

 PTフリーポートとPTスメルティングに対しても、解雇された労働者全員を直ちに復職させたうえで、労働者がそもそもストを決行する原因となった問題の公正な解決をめぐって交渉することを要求した。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。
 「これは単なる労働争議でもスト権の侵害でもなく、人権危機だ。PTスメルティングは、労働者が受給権を有する賃金や給付を6カ月にわたって支給しておらず、家族は苦しんでいる。PTフリーポートは、ストをつぶすためにスト参加者と家族、地域社会に深刻な害を及ぼそうとしている。これを続けることはできない。私たちは両社に対し、労働者を復職させるとともに、問題がこれ以上悪化する前に緊急に交渉に入るよう強く促す。その一方でインダストリオールは、さらに支援して両社に対する圧力を強めていく方法について、世界中の加盟組織と議論する予定だ」

以下、声明全文

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PTフリーポートとPTスメルティングによるスト参加者の大量解雇に関する
インダストリオール・インドネシア連帯ミッションの声明

 

オーストラリア(AWUとCFMEU)、オランダ(FNV)、北米(USW)、南アフリカ(NUM)の組合幹部は2017年8月8~11日、PTフリーポートとPTスメルティングによるスト参加労働者の大量解雇に関するインドネシア・ミッションを実施した。本ミッションは、140カ国・5,000万人の組合員(インドネシアの加盟組合11団体を含む)を代表するインダストリオール・グローバルユニオンが組織したもので、その狙いは影響を受けた労働者との連帯を表明するとともに、大量解雇を調査し、紛争の公正な解決に向けて関係者を支援することである。

本ミッションは、インドネシアの組合CEMWU SPSI、FPE SBSIおよびFSPMIの指導者と会談し、労働省とエネルギー鉱物資源省の首脳とも会見した。最後に、PTフリーポート(西パプア州グラスベルグ鉱山の過半数株主・経営者である米企業フリーポート・マクモランの子会社)、この口座に投資しているリオ・ティントと会談した。本ミッションは、関連組合と両省、リオ・ティント、PTフリーポートに会合への参加を感謝する。遺憾ながら、PTスメルティング(株式の過半数を三菱が、25%をPTフリーポートが所有)は、私たちの会合要請を拒否した。

本ミッションは気掛かりな事実を数多く確認した。PTフリーポートのグラスベルグ鉱山では過去数カ月間に4,200人以上のスト参加労働者が解雇されており、グレシックのPTスメルティング製錬所では1月に労働者309人がストを理由に解雇された。PTフリーポートとPTスメルティングはいずれも、解雇した労働者を非人道的に、軽蔑的な態度で扱っている。PTスメルティングは州労働省の要請に反して労働者の給料・給付の支払いを拒否しており、組合は裁判所で解雇無効を申し立てている。PTスメルティングは、労働者の所属組合FSPMIと争議の解決に向けて交渉することも再三にわたって拒否した。FSPMIの報告によれば、解雇された労働者たちは今、法廷審問でテロリストよりもひどい扱いを受けており、銃器と催涙ガスを携帯した警察が配備されている。これらの行動は、ILO条約に定める労働者の団結権、団体交渉権およびスト権を明らかに侵害している。

PTフリーポートは、解雇した数千人の労働者、その家族および地域社会に軽蔑的態度を示している。本ミッションが確認したところでは、報酬や雇用保障といった基本的な労働問題をめぐる交渉を会社側が繰り返し拒否したことに抗議して労働者が作業を放棄すると、PTフリーポートは労働者が「任意退職した」という信じられない理由で労働者を解雇した。本ミッションに寄せられた情報によると、会社側は労働者を解雇したあと、社宅から強制的に退去させ、会社の病院と学校の利用を拒否し、地元の銀行と共謀して労働者が融資を受けられないようにしたという。私たちは、何人かの労働者と家族が治療を受けられなかった結果亡くなったというショッキングな報告を受けた。家を失った労働者の多くは現在、テントや組合事務所で暮らしている。

本ミッションは、PTフリーポートの行動が重大な人権侵害であることについて、インドネシア国家人権委員会と見解が一致している。労働者としての基本的権利を行使したために解雇された人々は現在、基本的人権を失っており、自分自身だけでなく配偶者や子どもも食料や住宅、教育、基本医療を利用できない状況にある。

本ミッションの結果、労働者とPTフリーポートとの紛争の原因は、鉱山の今後をめぐる今年初めの交渉の際にインドネシア政府が同社に銅の輸出禁止を課したことに対応して、同社が雇用コスト削減のために一方的に一時帰休を実施したことだと分かった。PTフリーポートは、この一時帰休で労働者の報酬が約30%減少し、雇用保障が弱まることを認めているが、一時帰休の影響を受けた労働者を代表する組合と交渉する義務はないと主張している。しかし、インドネシアの組合も労働省も本ミッションに対し、インドネシアの法律に一時帰休の定めはないと述べた。PTフリーポートは、一時帰休をめぐって組合と交渉すれば労働者にスト権を与えることになるので交渉したくない、と本ミッションに語った。本ミッションは、PTフリーポートに限らずどんな企業でも、労組との交渉を拒否するだけで労働者の基本的なスト権を制限できる、というこの考え方を全面的に拒絶する。これは労働者の基本的な団結権・交渉権に関するILO第87号条約および第98号条約(どちらもインドネシアが批准済み)の明確な違反になる。

本ミッションは、労働省とエネルギー鉱物資源省がPTフリーポートとPTスメルティングの紛争解決に向けて介入していることを賞賛する。私たちは、この2件の争議をめぐる規制環境が複雑で、地区レベル、州レベルおよび国家レベルが責任を分担しており、両社を所有する巨大多国籍企業が規制機構を利用して利益を得ようと資源を配備していることを認識している。本ミッションは、両省の努力を認めつつも、紛争の解決を促進するためにぜひ一層の努力を払うよう要望する。

両紛争ならびにその結果生じた人的被害および権利侵害の根本的原因は、PTフリーポートとPTスメルティングが、労働者を代表する組合と交渉するのではなく紛争を行うことを決定したことである、と本ミッションは結論づける。私たちは両社に対し、そうではなく交渉の道を選ぶよう勧める。そうすれば最終的に、両社の利害関係者全員の利益に資するだろう。

本ミッションはPTフリーポートとPTスメルティングに対し、解雇された労働者全員を直ちに復職させたうえで、労働者がそもそもストを決行する原因となった問題の公正な解決をめぐって交渉することを要請する。

インダストリオールと本ミッションに参加している加盟組合は、これらの紛争の解決を促進するために、できる限りの方法で当事者を支援していく意思を持ち続けている。私たちは、グローバル労働運動の注目を集めているこれらの重要な闘いを主導している加盟組合と連帯する。また、公正な解決に向けて圧力を強めるという目的で、これらの紛争に起因する権利侵害と人的被害に引き続き注目することも約束する。

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