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第160号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2023年9月22日)

バングラデシュでは労働者の組織化がいまだ課題

2023-09-19

2023年9月19日:ILOロードマップの実施に関するバングラデシュ政府の進捗報告は、特に組合に対する差別と労働者に対する暴力への対処に関して、日々さまざまな課題に遭遇しながら、この国の衣料工場で労働者を組織化している労働組合員を取り巻く現実とはほど遠い。


バングラデシュのGDPの85%に相当する輸出利益を生み出している部門で、組織化や団体交渉をめぐる状況は厳しい。労働者の権利が絶えず侵害され、労働組合の声が押しつぶされていれば、使用者は利益を得る。なぜなら、もしそうでなければ、労働者は賃金・労働条件改善を要求し始め、使用者は不本意な出費を強いられるからである。一方、バングラデシュ政府は、使用者に労働者の権利を尊重させ、ILOロードマップが適切に実施されるようにしていない。

バングラデシュでは、複雑に絡み合った国家システムと民間企業が、衣料労働者の組織化を困難にしている。政府は結社の自由と団体交渉の権利を支持すると約束していながら、その約束を守っていない。労働組合員は、労働者の権利を保護するために組織化し、使用者を非難したことが原因で殺害されている。

殺害された労働組合指導者シャヒドゥル・イスラム・シャヒードのために正義を、人間の鎖の抗議―BGIWF―2023年6月

先ごろガジプールで、バングラデシュ衣料・製造労働者連盟(BGIWF)のオルグが、労働者の賃金の不払いに対して反対の声を上げたために、工場に雇われた暴漢に殴り殺された。全国衣料労働者連盟(NGWF)の別のオルグも、伝えられるところによればアシュリアで労働者の組織化に取り組んだために殺害された。

労働組合員の殺害が注目を集める一方で、オルグたちが組合活動を実施したために日常的にさらされている嫌がらせは見過ごされていることが多い。バングラデシュのインダストリオール加盟組織によると、使用者と暴漢、地元の政治家、警察が結託して、労働者を組織化しようとしている労働組合員に嫌がらせをし、圧力をかけている。地元の暴漢は使用者に代わって、工場に拠点を置く組合指導者を日常的に脅迫したり、暴行を加えたりしている。工場経営陣が組合指導者に、わずかな報酬と引きかえに退職を強制した例がいくつかある。この戦術が失敗すれば、組合指導者はただ解雇される。

労働者が借りている家の所有者も、例えば労働者による研究会の開催を許可しないことによって問題を引き起こしている。さらに地元の警察も、組合指導者が開催した公開の集会を妨害している。工場主も反組合活動に加担し、組合結成や組合加入を試みたら仕事を失う恐れがある、と絶えず労働者に警告している。使用者は、労働者の間で反組合的な感情をかき立てるために、労働者の利益を損なうように見える行動に組合指導者を関連づけようとしてもいる。

使用者と警察が地元の組合指導者に冤罪を着せた事例がある。インダストリオール加盟組織BGIWFのオルグは言う。

「私たちはアシュリアの工場の1つで労働者を組織化し、組合登録申請を提出した。経営側はそのことを聞くや、わずかな報酬と引きかえに組合指導者を退職させようとしたが、説得に失敗すると彼らを解雇した。工場の労働者は、これを見てストを決行した。その後、工場長は労働組合員に暴行を加えただけでなく、刑事告訴すると脅迫した。スト中の労働者は雇われた暴漢から嫌がらせを受けた。それらの組合指導者に対する刑事事件が係争中だ」

組織化を理由に解雇された組合員が別の工場で職を得ることは難しい。バングラデシュ衣料製造業者・輸出業者協会(BGMEA)が維持している労働者データベースでブラックリストに載せられるからである。組織化を理由とする労働者の解雇は、労働者に組織化を思いとどまらせるための恐怖戦術として利用されている。

労働組合連盟は、労働裁判所や労働省に不当労働行為や組合に対する差別の苦情を申し立てることができる。しかし、苦情の処理には長い時間がかかる。政府当局者は苦情の申し立てさえ嫌がることが多く、「組合指導者は国の経済を破壊しようとしている」と主張することがある。

インダストリオールに加盟している統一衣料労働者連盟のオルグは言う。

「私たちはガジプールにある労働者1100人の工場で約500人を組織化していた。私たちが組合登録申請を提出するとすぐに、経営側は組合長を解雇した。組合長は、経営側の命令を受けた地元の暴漢からも自発的に退職するよう脅された。だが、彼は圧力に屈せず、解雇された。私たちは労働裁判所に提訴し、労働省に書簡を送ったが、何の反応もない」

オルグたちは、軍情報総局(DGFI)や産業警察によって、時には夜の変な時間にたびたび呼び出されている。尋問されて組合活動をやめるよう説得され、殺害の脅迫を受けることも頻繁にある。バングラデシュで労働組合員が警察に拘留されている間に身体的暴行を受けた事例もちらほら耳にする。

衣料工場のストック写真―インダストリオール

インダストリオール加盟組織NGWFのオルグが、組合結成が違法とされている輸出加工区(EPZ)での労働組合・労働者の権利侵害事件を共有した。

「私はEPZの工場の1つで働いていたとき、労働者を組織化しようとした。抗議行動やストライキは許可されておらず、組合はない。労働者福祉委員会があり、かつて私は委員になろうとした。だが、バングラデシュ輸出加工区庁(BEPZA)は私を委員会に入れたがらず、代わりに関係者を登用した。そして、私を無理やり退職させようとする圧力戦術が始まった。ほんの小さなミスでも怒鳴られ、休暇を与えられず、複数回トイレに行くと問題視された。結局、工場は操業を停止したが、私たちは抗議して法定給付全額を勝ち取り、工場閉鎖後に支給された。その間ずっと、地元の暴漢から殺害の脅迫を受けた。EPZで組織化を試みたために国家安全保障情報局の尋問まで受けた」

使用者によって妨害されているのは組織化努力だけではなく、団体交渉プロセスも困難を極めている。加盟組織は、経営側が誠意を持って交渉せず、組合の要求憲章に否定的な反応を示すという状況を経験した。

アプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長は言う。

「私たちは、政府に労働者の結社の自由の権利が支持されるよう確保する責任があるだけでなく、使用者とバングラデシュから調達しているブランドにも、労働者の権利が尊重され、労働組合指導者が組織化を理由に狙い撃ちされないようにする責任があると考えている」

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