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第161号インダストリオール・ウェブサイトニュース

鉄鋼労働者、労働条件改善と明確なグリーン移行推進計画を要求

2023-09-26

【JCM記事要約】

・世界の鉄鋼市場は、低賃金、雇用の質、安全性、グリーン移行等の深刻な課題に直面している。9月にパリで開催されたOECD鉄鋼委員会は諸国政府に対し、鉄鋼労働者と家族のための政策と保護を要請した。

・インダストリオール・クリスティン書記次長は、労働者の福祉と環境を犠牲にしたコスト削減を断固反対し、多国籍製鉄会社に対し、公正な賃金、労働条件改善、安全衛生、労働者の技術開発、脱炭素のために多額の投資を呼びかけた。

2023年9月26日:ウクライナの再建、生活費危機下で労働者に公正な賃金を支払う必要性、鉄鋼部門を脱炭素化するための社会的に公正で明確かつ包括的な計画の立案が、OECD鉄鋼委員会で労働組合、TUAC、インダストリオール・グローバルユニオンおよびインダストリオール・ヨーロッパ労働組合が提起した問題だった。


9月25-26日にパリで開催されたOECD鉄鋼委員会に15カ国から大規模な労働組合代表団が参加し、低賃金、雇用の質、安全衛生、鉄鋼業が脱炭素化とグリーンスチールに備える中での雇用保護の必要性など、この産業の労働者が直面している懸念の高まりや課題を論じた。

ウクライナに関する討議では、終戦後の再建支援におけるOECDの役割を取り上げた。ウクライナ代表団が鉄鋼部門の「グリーン・マーシャル・プラン」を発表し、TUACは労働者が取り残されないようにするために、社会的対話と、計画の初期から労働組合を関与させることの重要性を指摘した。

ベロニカ・ニルソンTUAC書記長が次のように述べた。

「この独創的なマーシャル・プランは、欧州の労働者とその家族のためになるように再建資源を有効活用する方法の決定にあたって、労働組合を関与させることの重要性を示した。ウクライナ政府はその教訓から学び、ウクライナの労働者の意見を再建計画に反映させるとともに、社会的条件と団体交渉、結社の自由がウクライナ再建の決定的要因として尊重されるようにしなければならない

世界の鉄鋼市場は深刻な課題に直面している。一方で、物価上昇と金利上昇による投資抑制とが原因で、生産・消費が落ち込んでいる。他方では、アジア、中東、アフリカの多くの国々が生産能力拡大を主張し、世界の鉄鋼過剰生産能力が増え続けている。おまけに、生活費危機が鉄鋼労働者にさらに圧力をかけており、賃金がインフレに追いついていない中で、労働者は時には身体的リスクを冒して困難な仕事を遂行している。

クリスティン・オリビエ・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長が次のように述べた。

「労働組合は、労働者の福祉と環境を犠牲にしたコスト削減に断固反対する。ここ数四半期に鉄鋼部門が多額の利益と配当を報告しているのだから、多国籍製鉄会社は今、これまで以上に公正な賃金、労働条件改善、安全衛生、労働者の技能開発、脱炭素に多額の投資を行わなければならない」

鉄鋼業のカーボンフットプリント削減の必要性は、緊急の課題を突きつけているが、鉄鋼市場と鉄鋼雇用の不確実性をもたらすもう1つの要因でもある。労働組合は、社会的に公正な移行を鉄鋼委員会の修正予定の任務に含めるべきだと主張し、投資政策とリスキリング政策だけでは、鉄鋼業の雇用水準維持とすべての鉄鋼労働者のディーセントな雇用の保障に十分ではないと強調した。OECD諸国政府に対し、自らの役割を果たして適切な産業政策、経済開発計画および社会的保護を提供し、鉄鋼労働者と家族のために持続可能なグリーン移行と未来を確保するよう要請した。

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合のジュディス・カートン=ダーリング共同書記次長が次のように締めくくった。

「将来の技能ニーズの評価はグリーンかつデジタルな移行に備えるために重要だが、公正な移行の確保にははるかに多くのことが必要だ。労働組合は、労働者が取り残されないようにするために、組合と使用者、地域/国家当局が雇用マッピングと徹底した議論を行うことを要求する。鉄鋼労働者は脱炭素化された鉄鋼業への移行の中心におり、このプロセスに最初から最後まで関与しなければならない」

悲しむべきことに、会合開催と同時期に、組合運動の指導的発言者で、労働者のために公正な貿易を強力に支持したトム・コンウェイ全米鉄鋼労組国際会長が逝去した。鉄鋼委員会は同会長の活動と遺産を記憶にとどめ、米国代表団は労働組合と協力するという米国政府の方針を再確認した。

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